藤田和日郎  Fujita Kazuhiro
決して万人受けする絵柄ではない。タッチは荒々しく、背景も大味で、かわいらしいキャラクターなどは望むべくもない状態だ。しかし、抜群の迫力で満たされたその絵柄は、壮絶なドラマを引き立てる上では、何よりのスパイスとなっている。純真で、朴訥なキャラクターたちは時に愚直ですらあるのだが、彼らの人間味溢れる姿は、とかくクサくなりがちな「正義」というものを趣深く表現してくれる。決して堅苦さ一辺倒ではないところもいい。緩急を使い分けたネームの妙は思わず読み手を笑いに引き込んでくれるし、メリハリの利いた展開は読んでいて飽きさせない。そしてこれらの要素は、全てが身上であるストーリー作りの下支えとなっているのだ。重厚であり濃密であり、ダイナミックでもある大河的なストーリーは、まさに長編にこそふさわしい。最後まで手綱を緩めることなく描き続ける誠実な姿勢もまた、評価されてしかるべきだろう。
からくりサーカス ★★★★★★★★
連載 小学館『週刊少年サンデー』 単行本 小学館少年サンデーコミックス[続刊中]
拳法の達人鳴海は命を狙われる大富豪の息子マサルと、彼を守る美しい人形使いしろがねに出会う。相変わらずの荒っぽい絵柄だが、内容は実にハートフル。何事にも勇敢に立ち向かう鳴海としろがね、素直にたくましく成長していくマサルの様子には胸を熱くさせられる。シリアスだが暖かい、繊細でいて迫力に満ちたバランスのとれた見事な作品。〔w〕

塀内夏子(真人)  Heiuchi Natsuko(Masato)
女性が描く少年漫画としては、当初、特に絵柄の面で洗練されていないイメージがあった。ストーリーもキャラクターもよく言えば堅実だが、地味と言うより野暮ったさが目立っている。近年では女性らしいキラキラしたキャラクターが描かれると同時に、ストーリーにも派手さが出てきた。だが、同時にかなり強引な場面転換なども見られるようになっており、らしいといえば少年誌らしくもあるのだが、悪い意味で少年誌慣れしてしまった印象を拭えない。しかしデビュー当初から長期連載をこなす実力はかなりのものだし、佳作をコンスタントに生み出す力量はある。作品をエンターテイメントとしてみれば、十分に及第点を付けられる作家だ。
オフサイド ★★★★
連載 講談社『週刊少年マガジン』 単行本 講談社週刊マガジンコミックス[全29巻]
講談社コミックススペシャル[全15巻]
講談社漫画文庫[全15巻]
信頼感のあるゴールキーパーだった五郎は川崎高校に進学し、ストライカーに転向する。高校サッカーの魅力を伝えた堅実な作品で、無理のない展開を評価したい。しかし、堅調ではあっても繊細であるとは云いがたく、引き込まれるような迫力や予想外の展開にも縁がない。スポーツマンガとしてはどうしても魅力に欠けてしまい、残念なところだ。〔w〕
Jドリーム ★★
連載 講談社『週刊少年マガジン』 単行本 講談社週刊マガジンコミックス[全14巻]
講談社漫画文庫[全7巻]
ヒザに爆弾を抱えるJリーグ浦和レッズのエース本橋譲二に、まだ16歳の赤星鷹は1対1での勝負を挑む。サテライトからナビスコカップ、さらには日本代表へとステップアップしていく鷹の活躍を軽やかに描いた作品。ただ、団体スポーツであるにも関わらず、キャラクターに個性があるのは主人公とその周辺のみで、絵柄も肝心のサッカーシーンで迫力に欠ける。〔w〕

北条 司  Houjou Tsukasa
80年代に週刊誌上で連載が開始された2作品があまりにも有名。繊細で大人っぽい、少年誌らしからぬ絵柄は、見やすさや親しみやすさだけでなく高級感すら読み手にもたらす斬新なものだ。ストーリーやキャラクターもコミカルな部分とシリアスな部分が気持ちよく同居しており、細部のディテールもかなり凝っている。特に脇役の多彩さは少年漫画としては群を抜いており、彼らのキャラクター付けの濃密さも人気の秘密だろう。少年誌で一世を風靡したあと、現在では活躍の舞台を青年誌、成年誌に移している。この幅の広さも魅力的のひとつだ。
キャッツ・アイ ★★★★★★
連載 集英社『週刊少年ジャンプ』 単行本 集英社ジャンプコミックス[全18巻]
集英社愛蔵版コミックス[全10巻]
集英社漫画文庫[全10巻]
警視庁の刑事内海は美術品専門の泥棒キャッツ・アイを追っているが、じつは彼女たちの正体は内海の婚約者、瞳とその姉妹たちなのだった。軽快な恋愛アクションで、テンポのいいスムーズな展開が気持ちいい。少年マンガにお色気を上手く溶け込ませていて、ポップなストーリーやコミカルなキャラクターは後味がスッキリしていて読み応えがある。〔w〕
シティーハンター ★★★★★★★★
連載 集英社『週刊少年ジャンプ』 単行本 集英社ジャンプコミックス[全35巻]
徳間書店トクマコミックス[全35巻]
集英社漫画文庫[全18巻]
究極のスナイパー冴羽遼が友人の妹槇村香と繰り広げる都会派アクション。スケベでいつも朝立ちしている3枚目の要素と、拳銃を手にしたときの格好良さが表裏をなしているキャラクター性は実にスマート。脇役陣のキャラクターメイキングからビジュアルまで全てが精錬されており、抜群のクオリティを誇るエンタテインメントに仕上がっている。〔w〕