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ソムリエ (2001.1.9)〔w〕 |
| 原 作 |
城 アラキ |
| 漫 画 |
甲斐谷 忍 |
| 監 修 |
掘 賢一 |
| 連 載 |
集英社『漫画オールマン』 |
| 単行本 |
集英社コミックスオールマン[全9巻]
集英社漫画文庫[全6巻] |
| ストーリー |
天才的な感覚をもつ日本人ソムリエ佐竹城はワインに命を懸ける。フランスを放浪しながら、子供の頃のかすかな舌の記憶を頼りに幻のワインを探し続ける城だが……。 |
| 設 定 |
構成にやや難がある。ストーリーが続いているのか、オムニバスなのかがはっきりしないのが最大の原因で、特に前半はその傾向が著しい。つまり、超人的な味覚と知識を持ち合わせたソムリエの事件簿的な内容だった序盤から、一介のソムリエとその周りの人々が互いに刺激し合いながら成長していく人間ドラマへと徐々に移行していくのだ。後述するとおりその移行の過程に多少の無理もあるのだが、とにかくその定まらない方向性には全く一貫性がない。構成の変化と共に、つられて主人公佐竹城の性格も変化してしまうのも残念だ。
ただ、テーマをワイン一本に絞ったことは評価されるべきだろう。漫画界には、一時期からフランス料理を始めとした、レストランを題材とした漫画が氾濫したが、この作品はそれらとは明らかに一線を画している。真摯にワインの魅力を語っているし、読者もそれに引き込まれていくだろう。あるいは構成面での方向性の定まらない状態が、テーマの一貫性を際だたせているのかもしれない。 |
| シナリオ |
城が日本に渡る前後から、いわゆる「いい話」の方向へ急激に転化する。決して悪い方向へ向かったわけではないし、むしろそれ以前のシナリオの進め方が非常に難解なので、拙い変化だったとは思わない。しかし、余りに急激な変化のため、些か違和感を感じてしまう。それまでは父や義母の思い出に捕らわれたままの苦悩する毎日だった城が、来日後は急に他人を思いやる立場に変わる。最後の最後でまた城自身の話に戻るが、それがまたまとめるためにとってつけたような印象を与えてしまった。1話ごとの話は面白いのだが、全体的なバランスという点で見ればかなり匙加減を誤ってしまった格好だ。 |
| キャラクター |
悪役が登場しないのが面白い。木崎や志村など、最初悪く描かれていても徐々に理解し合ううちにフィードされていくキャラクターが特に後半には多く、ストーリーの盛り上がりを助けている。
あるいはVintage.62で、あえて「バツイチ、一児の母」を登場させたのはなぜか。別段、金持ちの女子大生や水商売の女性を登場させても良かったとは思うのだが、ここで描かれているのは「"LA
MAR"に入ることが出来るくらいの経済的なベースがありながら、現在のところはそれほど余裕がない」女性であった。その辺りの微妙なニュアンスを出そうと努力したのであればこれは見事に成功しているし、そういった細部のこだわりが作品の良い味となっている。
しかしながら、主人公のキャラクターがやや変わりすぎている点には疑問が残る。特に、ワインのためなら客の私事に干渉することを厭わない姿勢は変わらないのだが、その干渉の仕方が極端に変わっていく点は見逃せない。序盤では「イヤな客」に対してはかなり手痛い仕打ちを行っていたが、後半ではそんな客にも窘めるような、あるいはもう一方にも悪い点があったと気づかせるようなやり方で解決していく。城の成長というふうに判断してしまえばそれまでなのだが、シナリオに引きづられてしまったという可能性もまた否定できない。 |
| グラフィック |
フキダシの形が特徴的で、非常に不親切だ。1人しか描かれていないコマではフキダシの出口がなく、2人以上描かれたコマでも片側には大抵出口がない。それゆえ誰がどのセリフを話しているのかを想像しながら読まねばならず、慣れないと難儀するはずだ。
しかし、これは反面で叙情的な効果も生み出している。大抵コマの端に配置されることの多いフキダシだが、この作品独特の丸いコマはそんな既成の概念を打ち破る。自由に配置された印象を受けるためか、見た目にスムーズでスマートなイメージがある。また、作画的にタブー視されている、ページ内側のコマに隣接するフキダシを最小限に抑えることが出来るのもメリットの1つだ。
いかにも成年向け雑誌に連載された作品らしい、派手な動きのない落ち着いた絵柄は実に特徴的だ。それが若年層には妙に映る結果になっているかもしれないが、スマートな精錬されたタッチで劇画を描いているようなイメージがあり、非常に面白い。あっさりした線が城のキャラクターと相まって、個性を際だたせる効果を生みだしている。 |
| 装 丁 |
表紙の色鉛筆調で描かれたスッキリした色使いは優しい色調で、精錬された背表紙、裏表紙と対照的となっていて好感が持てる。原作・漫画・監修とクレジットが多いため、少し窮屈になってしまった感があるが、全体的にはまとまっていて、スマートな印象を受けた。最終巻の直接的な表表紙にやや難がある事以外は、全体的にハイレベルにあると云えよう。 |