胸キュン刑事 (2001.1.9)〔w〕
作 者 遠山 光
連 載 講談社『週刊少年マガジン』
単行本 講談社少年マガジンコミックス[全6巻]
ストーリー  亡き父の遺志を継ぎ、新人刑事として音羽署に配属された皇くるみは、近くに犯罪の気配を感じると胸の先のアンテナがきゅんと反応するという超能力を持っている。同僚の江口大輔と共に体を張って事件に向かっていくくるみだが……
設 定  刑事という設定は根幹部分であるから致し方ないにせよ、ヤクザや芸能界、政治家など刑事ものの王道とも云うべきベタベタのエッセンスが満載。なかでも札束や豪邸、高級ホテルなど豪華極まりないステージの数々には思わず圧倒されるが、それを無駄遣いしすぎ、インフレ状態になっているのには辟易させられた。もちろん、そんな王道中の王道の展開を徹底している点は評価したいが、あくまで2次的な評価であり、何か特別な魅力を感じるわけでも新しい発見があるわけでもない、平凡な表現であると結論づけざるを得ない。尋常ではないリアリティのなさは百歩譲って認めるとしても、余りにこだわりのない細部には不満が残る。
シナリオ  作品の根幹に流れる「お約束」は、シナリオでも忠実に守られている。各話ともくるみが事件に首を突っ込み、お色気で犯人を誘い、寸前で助かるという判を押したようなベタな展開が繰り広げられ、その題材と助ける人物の変化によってシナリオが多少変化する。とはいっても助けるのは大抵が大輔で、たいした変化があるわけではない。
 反対に、このお約束という制限がここまで足枷にならなかったものだと感心するほどだ。あまりにベタな展開のため、多少のバリエーションがないと読者は飽きてしまう。穿った見方かもしれないが、そういったところ点での苦労を推察してみると、なかなかの努力作と見えなくもない。
キャラクター  主人公くるみと大輔、音羽署の何人かの刑事の他はレギュラーらしいレギュラーがいない。それぞれのオムニバスに合わせ、1回限りのキャラクターを入れ変わり立ち替わり登場させてどんどん回していくという手法は、悪役がべらぼうな数になってしまうため個性がつけづらく、画一的になってしまうという欠点がある。多分に洩れずこの作品でもその弊害が出てしまっており、僅かに北海道雪まつりの親子が例外となっているのみだ。1回限りの登場では魅力あるキャラクターを描きづらく、没個性的になってしまう。オムニバスの魅力は途中からでも読者が入りやすいという点だが、反対に作品に読者がのめり込みにくいという欠点がある。その短所がキャラクターにはもろに出てしまった格好だ。
 主人公のくるみにおんぶにだっこの姿勢も頂けない。エッチだが敏腕の大輔というキャラクターには反発は起きないだろうが、くるみは快活なショートカットという、かなり男性読者の嗜好を限定するキャラクターである。ストーリーに重厚さが欠片もない以上、くるみに魅力を感じない読者は全く見向きもしないだろうが、はたしてそれを承知の上でやっているのかといえば甚だ疑問だ。
グラフィック  時代の経過を最も色濃く感じさせるのが絵柄であるし、この作品も多分に洩れずその傾向がある。鑑賞に堪えられないほどひどいわけではないが、女性の色気を前面に押し出した作品としては絵柄が古臭いし、女性の体型もスマートとは言い難い。しかし、当時としては十分に魅力的な絵柄だったわけで、その点を指摘するのは酷だろう。
 一方で、性的な表現方法には多少の疑問が残る。性表現の限界に挑んだ訳でもないだろうが、現在読み返してみるとかなりきわどい表現がなされている。上半身はもちろん、下半身も布一枚で隠しているケースが多く、週刊少年誌に連載されていたとは思えない。もちろんシナリオ上どこにもハダカの必要性などなく、「お約束」だというのは百も承知なのだが、いわゆる「規制前」の作品としても、やや過剰な表現であると考えざるを得ない。
装 丁  ハッとする色彩を使用した4巻をのぞいて、全体的に印象は薄い。それでも背表紙の色が赤であること、表表紙が目を引く女性であること、時代背景を考慮すれば工夫していると云えなくもないタイトルロゴなど目を引くところはある。また定型に従った背表紙、裏表紙など宥恕すべき点は多分にあり、まずまずの出来映えだというべきなのかもしれない。