行け!稲中卓球部 (2001.5.12)〔w〕
作 者 古谷 実
連 載 講談社『ヤングマガジン』
単行本 講談社ヤンマガコミックススペシャル[全13巻]
ストーリー  稲豊中卓球部の部員は定数ギリギリの6人。部長でカラダは大人のの竹田、副部長で女に持てる木之下こそまともだが、ハーフでワキガの田辺、ムッツリスケベの田中、そしてへそ曲がりで変態の前野とごっついリーゼントでバカの井沢。稲中卓球部に集う部員たちが巻き起こすはちゃめちゃなコメディ。
設 定  そもそも、この破天荒なギャグを疲労する舞台は、中学生でも卓球部でなくとも通用するはず。しかし、中学生であり、卓球部であるからこそそのギャグが最大限に生かされるのも確かだ。近年特に増えてきた、学校生活にありがちないわゆる「内輪ノリ」の雰囲気を上手く作り上げた作品であり、「卓球をあまりやらない卓球部」や「常識人と変人の融和」はその象徴であると思われる。これらのジャンルに属する他の作品と異なる点は、1つは変態の書き方に徹底的にこだわったところであり、また1つはタブーギリギリの美的文章的表現を躊躇なく使用した点であり、もう1つは青年誌という媒体をフルに生かして色気のある性表現を多用した点である。嫌う読者はとことんまで嫌うだろうし、そういった要素が理屈の上でも認識できるのだが、それを承知の上であえて挑戦している姿勢は評価したい。
シナリオ  これだけギャグに徹したコメディになると、必然的にストーリーの重要性は薄くなってくる。しかし、竹田と岩下、井沢と神谷の関係などを見ていくと、実は破綻が少なく、意外にも堅実なストーリーであることがわかる。岩下がバイト先の男に流れかける部分はやや唐突な印象が拭えなかったが、全般的にそれぞれの男女の関係が自然な段階を踏んで進んでいる様子を表そうとする努力が見える。結果的にその他のキャラクター(とくに前野)のあまりの成長のなさに象徴される停滞感がいいコントラストをつけており、なおさら映えて見える。
キャラクター  前半、あるいは前野のキャラクター性におんぶにだっこかと思われたが、それは見事に覆された。成功の理由は1つに部員6人のキャラクターが割合ハッキリしていたことであり、また岩下京子の登場も大きい。存在感が比較的地味な木之下や田中、田辺も要所要所で効果的な活躍をしており、後半やや過剰な露出になったものの全体的にはいい味を出していた神谷も面白い。定番と破綻の双方をかなり緻密に織り交ぜており、前者の象徴が竹田、後者の代表が前野なのだろう。それぞれに木之下、井沢というフォロアーを添え、さらに逆転の存在である岩下と神谷。フクザツに絡み合う設定がシュールな面白さをうまく醸し出してる。
 注目をつけるとすれば、教師の存在感か。顧問の柴崎は言うに及ばず、女子卓球部の立川や末松など、キャラが立っているわりにはインパクトが薄い。単純な登場頻度のせいか、あるいは部員のインパクトにおされてしまったのか。いずれにしても、決して解決できない問題ではなかったはずだ。
グラフィック  意図的な絵柄ではあるのだろうが、少なくとも多くの女性が敬遠するだろう事は想像に難くない。この絵柄でなければ表現できなかったという部分もそれほど多くはないだろうし、どちらかというと失うもののほうが多かった筈だ。
 しかしその中でも、女性キャラクターだけは比較的まともに描こうとしている点は興味深い。もちろん付録でブサイクな女キャラの特集をするくらいだから、それなりに頂点から底辺までを描いているのだが、作品の総体としては底辺の方はやはりインパクトに薄く仕上がっている。
これほど独自性豊かな作品でありながら、やはり男性青年誌の典型としての部分はおさえているようだ。
装 丁  意味がわからない表紙が延々と続くが、おそらく意味など無いのだろう。インパクトは無いことはないが、それほど極端なものではない。表紙と背表紙のロゴが微妙に違う点や袖の煽り文がイマイチセンスに欠ける所は残念だが、全般的に無難な仕上がりだ。1巻の「集合写真」型に、唯一気合いを感じる。