|
 |
美少女戦士セーラームーン (2001.8.19)〔w〕 |
| 作 者 |
武内直子 |
| 連 載 |
講談社『なかよし』 |
| 単行本 |
講談社コミックスなかよし[全18巻]
講談社コミックスデラックス[全12巻]
【美少女戦士セーラームーンショートストーリーズ】講談社コミックスデラックス[全2巻] |
| ストーリー |
ドジで泣き虫な月野うさぎは、登校途中に額に三日月のしるしがある黒猫、ルナを拾う。とつぜんしゃべりだしたルナからブローチをもらったうさぎは、愛と正義の戦士「セーラームーン」に変身してしまった。そして、悪を退治するべく戦ううさぎの前に現れたのは「タキシード仮面」という男だった…… |
| 設 定 |
いわゆるレディスヒーローものとテレビの戦隊ものを結合させたような設定なのだが、これが予想以上にスムーズに機能した。漫画ではそれほど多くは使われていないためか、なかなか斬新で、読者を瞬間的に惹きつける魅力をもっている。舞台設定だけで十数冊の単行本量をもたせてしまうだけの手腕は見事だ。
セーラー服というコスチュームも、存外上手く機能している。通常、成人漫画等で男性が中高生を性対象として見る際にシンボリックに扱われるセーラー服だが、ここではそうではなく、小学生などがいわば「大人のお姉さん」というような憧れの対象として中高生を見る象徴としてセーラー服が描かれているわけだ。デザインも過剰にアレンジしてはおらず、抑えすぎてもいない。さらにうさぎ特有の変身能力によって、コスチューム的な魅力は広がった。
大きな難点があるとすれば、そのあまりの「カタカナ」の多さ。敵役はほとんど全てがそうであるといってよく、個々の特徴が掴みづらい。 |
| シナリオ |
冒頭から終盤までとかく荒い部分が目立つ。端的に表現すれば「難読」だ。まるで法律書を読んでいるように難解に感じてしまうのは、とにかくシナリオの構成からコマの運びまで、あらゆるものが不親切であるからだ。それでも序盤、セーラー戦士が5人揃う辺りまでは多少の整合性があった。巧妙な伏線や、予想を上手く裏切る巧妙な展開はないものの、少女漫画らしい夢と愛にあふれるシナリオは悪くない。亜美とレイが登場するのにもそれほどの無理はないし、ヴィーナスの登場もなんとか許容範囲であった。
しかしキング・エンディミオンが現れ、ネオ・クイーンセレニティが登場し、ちびうさが活躍し出すと、さすがに限界を感じてしまう。「過去」であるうさぎと「未来」であるネオ・クイーンセレニティのキャラクターづけには、それがとくに顕著に現れており、どうも2者間で明確な差異(あるいは同一性)を保つことが出来ていない。とにかく前世・構成、変身前・変身後、通常状態・洗脳状態など、1つのキャラクターでも複数のパターンを持つものがほとんどで、読者は容易にその特性を認識できない。複数のパターンが存在すると言うことは、それだけ人間関係の複雑さも等比例するわけで、それを絵柄で変化をつけることが難しい(そもそも同一キャラクターであるから)だけに、視覚で訴えることができない。だからこそ、シナリオには細心の注意を払わなければならないわけだが、残念ながらそれは十分ではなかった。ハードルが高くなった分、余分に無理が目立ってしまった格好だ。
ネームやト書きも拙い。特に4人の戦士を「戦いの戦士」「知の戦士」「保護の戦士」「愛の戦士」と並列記述するのはどうか。並記の場合はすべからく同等の内容を置くべきで、そこにいかにリズムを作り、言葉の妙を与えるかによって作者のセンスが問われる。残念ながらこの面で、作者の力量を窺うことは出来なかった。 |
| キャラクター |
とにかく多い。セーラー戦士側、悪役側と非常にわかりやすい設定の筈が、なぜか非常に複雑に感じてしまう。主な原因は前述したとおり、1つのキャラクターに複数のパターンが存在するからだが、セリフやト書きで強調されているほどそれぞれのキャラクター性がハッキリしてはいないからだろう。うさぎの「ドジ」も変身してしまえばまったくわからなくなるし、マーキュリーとヴィーナスは最初から堅実で、マーズとジュピターは共に気性が激しく、ストーリー的に変化をつけづらい。勢いちびうさのキャラクターに頼りたくなるが、そうするとうさぎが俄然目立たなくなってしまう。また、際限なく増えていくセーラー戦士は、いうまでもなく供給過多である。
悪役の個性もつけづらい。総じて美形で、うさぎとまもるに手を出してくる。少女たちの「お姫様願望」を満たす意味では実に効果的だが、失うものもあまりに大きく、整合性をどうにか見出すためにストーリーを犠牲にし、その余波でグラフィックに無理が生まれ、まわりまわってキャラクター性に跳ね返ってくる。あまりに即時的な判断が残念なところだ。 |
| グラフィック |
絵柄は賛否あるだろうが、その声に比例するように長短それぞれのポイントがあり、一概に評価できない。通常の少女漫画よりラフなタッチは恋愛を描く上では時に好都合でもあるが、戦闘シーンではかなりごちゃごちゃしてしまい、決してきれいな表現ではなくなる。また「子供」を描けばはてしなくかわいらしくなるタッチが、「大人」を描くと一様にキツい顔になってしまう。誰もが納得できるものではなかったが、それほど目くじら立てて否定されるべきものでもないのではないだろうか。
一方、コマの構成という点では工夫が見られない。話題の転換部分でコマ間の枠幅を広げなかったり、心象心理をト書きで過剰に説明したり、立ち割のカットと上に重ねたカットの背景トーンがかぶってしまったりとシンプルなミスもさることながら、フキダシの引き線(誰がいるかを示す突き出し)が極端に細いため、誰のセリフかがわかりづらいと云った致命的な問題点もある。キャラクターの多い作品では当然注意しなければならないことで、それを犠牲にしてビジュアル感覚を大切にしたというのならば、大変な錯誤だ。
さらに、ネームが多いページが目立つ。おそらくコマ構成や絵で表現できなかった部分を説明的なセリフで補っているのだろうが、それにしても極端ではないか。文字による説明は視覚による表現より質が劣る。シナリオ面の拙さが影響した印象だ。 |
| 装 丁 |
全般的に派手の一言。セーラー戦士の集合写真的なものからうさぎの一人ぬきなど、定番のデザインで固められている。色調も鮮やかでスムーズだが、配色についてはあるいはアニメの効果もあって、違和感が軽減されているかもしれない。ただ、サブキャラクターを個別に登場させなかったことによって、彼らの個性が稀薄であることが強調されてしまった感があるが、これは致し方のないところか。 |