ライバル (2001.8.19)〔w〕
作 者 柴山 薫
連 載 集英社『月刊少年ジャンプ』
単行本 集英社ジャンプコミックス[全14巻]
【番外編】集英社ジャンプコミックス[全2巻]
ストーリー  水上ボクシングジムの次女羽美は、ランニングしている最中に軽くてスケベな桑田平助という男に出会う。水上家に下宿することになった平助はボクシングが嫌いだと言うが、実はとんでもない実力の持ち主だった……。
設 定  姫野・竜太という、2人のライバルが登場する。しかしこの他にも多くの好敵手が現れ、しかも姫野と竜太がかわるがわる登場する忙しない展開は、ややタイトルとはそぐわない印象も受ける。それぞれの対戦相手に加え、平助のマネジメントや父親との関係に絡んで多くの女性キャラクターも登場し、まさにスポーツ漫画としてのボクシングと恋愛漫画としてのコメディを上手く折衷させることに狙いを置いたことが読みとれる。
 ボクシング漫画としては、それなりに説得力のある必殺技や無理のない対戦相手、迫力があり破綻のない試合の描写など、そこそこのクオリティーが保たれている。恋愛漫画としても、絶対的なヒロインである羽美に対して、ひろみや由香、香摘など、入れ替わり立ち替わり登場するキャラクターが波乱を巻き起こし、楽しい。
 いずれにしてもそこそこの内容になっているのだが、注目したいのはこれらを融合しながら違和感なく溶け込ませている点だ。大抵が前後者を交互に繰り返して構成しているが、それぞれ背景に厚みがあるため、重ねた部分にはより説得力が生まれてくる。いずれかが頭でっかちになりがちな中、いずれも平均より高いレベルで保っている点は、エンタテイメントとして評価できる。
シナリオ  ストーリーそのものにそれほど注目すべき点はない。特別奇抜な展開はなく、かといって平凡というにしては起伏があり、まずまずの水準を終始保っている。平助と羽美の関係も不自然に引き延ばされてはおらず、多彩なキャラクターを登場させることで無理なくストーリーが進行している。
 ただし、最後ばかりはなかなか強引に話をもっていくことでスリリングな展開を生み出した。姫野の極端な減量に、それに伴う平助の自信喪失、さらに羽美と体を重ねるくだりは決して自然な流れではない。最後の試合とラストシーンまでこのままの流れで突き進んでいくが、いかにもハッピーエンドというラストシーンといい、物足りなさは少なからず残る。
キャラクター  軽くスケベで、めちゃめちゃ強いという実にありきたりな平助のキャラクターが案外悪くない。同時に、一本気で心が強い(おまけに料理が下手)羽美もかなり定番のキャラクターなのだが、こちらもオリジナリティがある。むしろ下手にひねらず、定番中の定番に仕上げたことが上手くいった。
 また、竜太と由香の兄弟も面白い。他のライバルや女性キャラクターが次々と恋人同士になっている中、この2人は兄弟であるが故、なかなかくっつかない。それぞれのライバル間で差異をつけるため、また平助と羽美に最後まで絡んでいくために、実に上手く機能しているキャラクターだといえるだろう。
グラフィック  最大の特徴は、女性のハダカの見せ方。安易に女性のハダカを(サービスとして)描くことについてはいろいろと問題もあろうが、この作品が従来とやや異なる表現をしている点には注目したい。羽美・ひろみ・亜佐利など、この作品のキャラクターたちは何故かとにかく羞恥心が薄い。ハダカの状態でのぞかれたり、抱きつかれたりしたときには隠せばいいものを、なぜかそのまま堂々としている。ストーリー構築上、ハダカをだすとシナリオが止まってしまい、出すタイミングが非常に難しいものだが、この作品ではハダカの状態で動かしたりしゃべらすことによってストーリーを止めない。普通、エピソード的に余談としてのニュアンスになりがちな部分を本筋に組み入れることで、物語の流れをスムーズにした。中盤以降、こういった表現は徐々に少なくなってはいくのだが、続けていたとしてもそれほど否定されるものではなかっただろう。
 絵柄はスタンダードではあるが、男性受けする丁寧な絵柄。特に羽美はラストシーンまでは髪型もそれほど変わらずに美しく描かれており、シンボリックなヒロイン像として秀逸だ。キャラクターの描き分けもわかりやすくて親切であり、文句のでにくいパターンのものである。
装 丁  全体にキャラクターを描いたものが多いが、平助が小さく、羽美が大きく配置されているのは男性読者を意識したものか。切り出しのカットが多く、背景はギザギザに縁取った四角形で、裏表紙の側帯と色を合わせている。
 注文を付けるとすれば、背表紙の絵。せっかく人物を描いたのであれば、やはり全く統一感があったほうがいいし、絵柄の質までもバラバラでちょっと残念だ。