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機動警察パトレイバー (1999.11.10)〔w〕 |
| 作 者 |
ゆうきまさみ |
| 連 載 |
小学館『週刊少年サンデー』 |
| 単行本 |
小学館少年サンデーコミックス[全22巻]
小学館少年サンデーコミックスワイド版[全11巻]
小学館文庫[全11巻] |
| ストーリー |
東京湾中部地震による東京・千葉・神奈川1都2県の被害をてこに、瓦礫の処理と東京湾の埋め立てを同時に行うべく企画・立案された史上最大の公共事業「バビロンプロジェクト」のため、土木作業用多足歩行式大型マニピュレーター「レイバー」が開発された。警視庁では多発するレイバー犯罪に対抗するため、警備部特化車輌2課にあらたに第2小隊を新設する。レイバー部隊を志望した婦警のタマゴ泉野明は憧れの最新式パトロールレイバー「イングラム」の操縦者となるのだが… |
| 設 定 |
この作品を漫画という単体のジャンルで見ることが難しいため、実に判断に苦しむ。まず1つとして、アニメというジャンルと非常に密接な関係にあったこと。当初OVA(オリジナルビデオアニメ)という形でスタートし、その後『週刊少年サンデー』での連載、映画化、テレビアニメ化、再度のOVA化、再度の映画化という過程をとったため、非常に設定が複雑になってしまった。これらは基本的なキャラクターやシチュエーションは変わらないものの、それぞれ独立したストーリーであり、そのためそれぞれの過程で一部リンクしていない部分が出てきている。しかもそれが結構重要なキャラクターであったりするのだ。
ここでは漫画単体としてこの作品を見たいところなのだが、先にアニメを見ているのと見ていないのではかなり印象が違ってしまう。それが最も顕著なのは「シゲさん」こと「シバシゲオ」というキャラクター。漫画しか読んでいない場合、この人物の本名が「シバシゲオ」という名前であることすらわからない。では漫画のストーリー上、このキャラクターが脇に納まっているかというとそういうわけでもない。遊馬や野明と絡むシーンも極めて多く、終盤ではバドを預かる役目まで負わされる。アニメを全く知らない人にはちょっと不自然に見えてしまうが、知っている人には何の違和感も感じない。マルチメディアを縦断している作品ならではの問題点で、漫画単体で見た場合の配慮にやや欠けている点が実に残念だ。 |
| シナリオ |
凝ったシナリオが特徴的。構想期間が長かったためか、特に骨格となる部分における状況設定のリアリティや緻密さは完璧。細かいディテールの工夫や遊び心がうれしい。
話の進め方も、ト書きで説明するような野暮なことは一切せず、セリフや絵で全て消化しきっている。とても少年誌に連載されていたとは思えない、テーマ性の高いコンテンツや、「人身売買」「お稚児さん」など多少緊張感を生むフレーズなど、ややインテリジェンスな雰囲気を醸し出しているが、決して行きすぎた表現が含まれているわけではない。ただ、掲載されていた雑誌にはなんともそぐわない。編集サイドは何としてでも青年誌に掲載させることはできなかったものか。
一方でロボット(レイバー)が活躍しながらも、従来のロボットアクションやサイバー作品とは一線を画したシナリオは高く評価したいところ。この作品において、レイバーはあくまでエッセンスにすぎない。車と変わらない、日常的な「道具」という扱いで描いているから、例えレイバーの代わりに他の何か使ったとしても、シナリオ的には一向に構わなかったはずだ。そういった重厚さが、まさにこの作品の骨格となった。個性的なキャラクターに支えられながら、財界や政界にまで及ぶ壮大な展開はとにかく圧巻だ。
一方で、残念ながらやや不自然な展開も見受けられないではない。言うまでもなく、廃棄物編が異常に長引き、トータルのバランスを大幅に崩している。また、一度ブラジルにとんだ内海課長とバドの帰国は非常に唐突だったように思えるし、途中で挿入されるオムニバス的なサイドストーリーも必要ない。黒崎の存在感を抑えめにすれば解消できないこともなかったと思うし、オムニバスはもっとコメディに徹して、完全に番外的に扱うこともできたはずだ。絶妙のバランスでシナリオが作られているだけに、少々のアラが逆に気になってしまう。 |
| キャラクター |
第二小隊の隊員を始めとして個性的なキャラクターがあふれている。主役の野明、それに準じる遊馬も魅力的なのだが、なんといっても面白いのは厚みのある脇役陣。内海や黒崎をはじめ、影の主役とも云える後藤隊長、愛想の悪い松井さん、サラリーマンの典型のような実山さんなど、「オッサン」たちの存在感が大きいという点に、この作品ならではの独特の世界観が象徴されている。中には存在自体はたびたび指摘されていながら顔を出さない篠原重工社長や、そもそも全く登場しないシャフトエンタープライズの社長など、その幅の広さは作品のスケールの大きさにもつながっている。
難があるとすれば、前半ほとんど意識しなかった脇役が、重要なポジションに突然変容するパターンが多かったこと。先に挙げたシゲさんもそうだが、企画7課の青砥、SSSのジェイク、課長の福島など、後々になって名前がわかっていくキャラクターがたくさんいる。設定の緻密さに比べ、ストーリーそのものはそれほど先のことを考えて作っていない、いわば場当たり的な作業であったのではないかと邪推してしまう。 |
| グラフィック |
既に限りなく完成型に近い状態に仕上がっている絵柄については、特別云うことはない。特に光の使い方が印象的で、逆光・順光・3点照明・レンブラントライトなど多彩な技術が駆使された。前半と後半のビジュアルの違いもあまりなく読み手に優しい絵柄だといえるだろう。
また、出渕裕氏が大きく関わったとされるメカニックのデザインは圧巻の一言だ。イングラム・グリフォン・AVSなどマシンデザインの精巧さは云うに及ばず、ヘラクレスは美的な対比として、ブロッケンはしなやかさの対比として、エコノミーは安定性の対比としてデザイン的に十分な配慮が払われている。回転灯を肩に、リボルバーを脚に、盾と警棒を腕にとトータルバランスを崩さない計算し尽くされたグラフィックをより一層効果的にしている。
しかしこの作品のグラフィックで最も優秀である点は、精錬されたコマ割り、コマ運びにある。一般にストーリー漫画の中に「映画的」と表される作品は多いが、この作品は映画の長所をコマ運びで表現し、生かした所にその価値がある。イマジナリーラインの遵守、ハイ・ローアングルの挿入、いわゆる「カメラ目線」の使用などは云うに及ばず、風景を描くことで場面転換や時間経過をはかる高度な技術を当たり前のようにこなしている。さらにズームやパンを意識した絵のカットインや、間接的な音声はラジオ、電話、無線などそれぞれ別々のフキダシで描き分けるなど斬新で質の高い技法を惜しげもなく披露した。ストーリーの魅力を最大限に発揮できる土壌を強固に作り上げている。 |
| 装 丁 |
青年誌での連載が不可能であったなら、どうしてB6版で刊行してくれなかったのか。表紙にも特別な工夫があるわけではなく、背景も単色であったりカットのコピーであったり、工夫がほとんど見られない。中身の密度に比べると非常にありきたりな印象が拭えず、残念だ。
唯一評価したいのは作品のタイトルロゴ。非常に近代的なイメージがあるこのロゴにはグラデーションがよく似合う。出来れば全巻グラデーションにしていただきたかった。第1巻だけロゴのデザインが微妙に違う点にも注目したい。 |