キャプテン (2001.10.20)〔w〕
his「マンガびと」 wat「漫画批評」
作 者 ちばあきお
連 載 集英社『月刊少年ジャンプ』
単行本 集英社ジャンプコミックス[全26巻]
集英社ジャンプコミックスセレクション[全15巻]
集英社愛蔵版コミックス[全15巻]
集英社漫画文庫[全15巻]
●意外に古い時期の作品だった!
wat:今回から始まりました、「漫画トーク」。毎回、漫画評論系サイトのオーナー様をゲストに迎えて、熱い議論を繰り広げていこうと思います。というわけで、第1回目の記念すべきゲストは、「マンガびと」管理人のhisさんです。よろしくお願いします。
his:よろしくお願いします。
wat:さてさて。今回の題材ですが、hisさんからの熱い要望があったようなないような(笑)。ちばあきお「キャプテン」でお送りしたいと思います。
his:あったようなないような・・・気のせいです(笑)
wat:なんだか1回目に相応しいかなりの名作でありますが、hisさんはこれ初めて読んだのはいつ?
his:ぼくは、小学校の時ですね。
wat:ああ、やっぱり。僕も小学生の時。
his:イガラシ編のあたりだったと思う。
wat:ああ、なるほど。『月刊ジャンプ』で読んだ訳ですね。
his:いえ、アニメでやってた影響で読みました。
wat:そっちか(笑)
his:『月ジャン』読み出すのはもうちょっとあとでした。「やるっきゃ騎士」のあたり(笑)
wat:で、僕は今回ジャンプコミックス版を買いそろえてみたんですが、1巻の初版がなんと1974年4月!
his:74年ですか(笑) 思ったより古いですね。
wat:僕は生まれてないです。
his:アニメは見てないですか?
wat:見てないですねえ。
his:キャプテンのアニメは「あさりちゃん」の裏番組だったんですよ。
wat:ふーん。hisさん、何年生まれでしたっけ?
his:ぼくは73年、早生まれです。
wat:ああ、そうなんですか。なるほど。

●時代背景はどこまで考慮すればいいのか?
wat:それでというかなんというか、やっぱり全てが古い。で、今回もう一度読みかえしてみてですね、この作品って「古典」として見るべきなのか、「現代」の視点で見るべきなのか迷っちゃう所があったんです。
his:えーと、そうすると、たとえば「ドラえもん」なんかはどっちに分類しますか?
wat:うーん、そのあたりはまた微妙は話になってくると思うんですが……。例えば時代背景なんかはいいと思うんですよ。ただ、表現技法とかそのあたりはやっぱりその後の進化がめざましかったんで、いろいろな問題点があって。
his:うん。
wat:例えば最初の方。谷口が入部するときに最初に話しかけるのが、多分後の丸井だろうと思われる人物。でも、このあたりかなり曖昧になっていますよね?
his:曖昧、というのは?
wat:この人物が後の丸井だという証明がないというか。あくまで憶測でそうだろうと推測するだけ。
his:あー、でも丸井だよね。コイツって(笑) 証拠なんてないし立証できないけど、絶対丸井という自信はある、という感じ。
wat:でも、この丸井っぽいのの次に、谷口に「こんな所で着替えをするな」というような注意をするチビは、このあと登場しないし。
his:そうですね。
wat:だから、なんだかこれはミスのような気がするんですけれど、時代背景的にこんなレベルは許されていたのかもしれないし。  ただ、時代背景をどの程度情状酌量していいものかはすごく判断が難しいと思うんです。
his:watさんはわりと「ミス」という表現をしますが、それって、いつもおっしゃる、物 語としての完成度の問題において「不完全である」という意味での「ミス」ですよね。
wat:大まかに言えばそうですね。でも、例えば「辻褄が合わない」といった事も含みますから。よくあだち充先生が、トビラであやまっているような。
his:えーと、どんなんでしたっけ?
wat:「H2」の「誕生日間違えた!」とか(笑)
his:はいはい(笑)。「モンキーターン」で事実誤認があったり、とか。
wat:「帯ギュ」の「女子はなかった」とか(笑)
his:そういうのも含んできますか?
wat:そうですね。それで、技法的にはしょうがない面が結構ありますよね。
his:技法的に、とおっしゃいますと?
wat:例えば、最初の頃はトーンがないとか。
his:トーンは2巻くらいですか?
wat:いや、どのくらいだろう……15巻かな?
his:谷口の金成中戦ではトーン貼ってませんか? 「やつらピッチャーが投げると同時に走ってる」というセリフのあるページあたり。
wat:おおうっ、貼ってる(笑) 気づかなかった……
his:松下が「おれは満足だね たとえ負けたとしても」といってるコマがたぶん最初じゃないかな。
wat:ホント、ここだけ何故かトーンですね。前後はそうじゃないのに……
his:トーンの試しばりって感じですかね 。
wat:うーん、かもしれません。で、結局最後までトーンはすごく少なくて。全国大会で、外野が芝だったりするとたまに貼るくらい。
his:基本的にはほとんど使いませんよね 。
wat:そうそう。だからすごいですよ。全部カケアミ(笑)
his:いいですよね。金成中のユニフォームとか全部手描きだし(笑)
wat:ドットだもんなあ(笑)。まあ、だから例えば「月刊連載なのに、背景が白い」とかいまだと言われちゃうんだろうけど、そんなことはないと。
his:言う人は言うよね。
wat:「キャプテン」に関して?言いますかねえ。
his:「キャプテン」では言わないだろうけど、たとえば「幽遊白書」後半で(作者の)冨樫(義博)氏がアシスタントつかわないで、ひとりで描いてた回があったでしょう?
wat:はいはい。
his:あれ、かなり非難されたんだけど。それこそ「雑だ」とか「トーン貼ってねー」とかって今も言われるよね。
wat:いわれましたねえ。
his:この辺の感じ方、というのかな 。
wat:hisさん、どっち派なの?
his:ぼくなんかには、結構みんな絵にこだわってるじゃん、てな感じで。
wat:あれはあれでいい?
his:ぼくは、ぜんぜんOKなんですよ 。
wat:ふーん。
his:出してきたものがすべてなんだから。基本的にぼくは批判しない。
wat:なるほど。で、話が戻るんだけど、個人的に「時代」を感じるのが「差別用語」(笑)
his:なにかありました?(笑)
wat:特に青葉の部長がいいまくり(笑)
his:はい!きました!! 「めくらが!」「きちがいめ!」ですね(笑)
wat:そうそう(笑) あと、体罰のオンパレードとかね。あのあたりは、古き良き時代のスポ根で、いいかんじだなあと。
his:部長ね(笑)
wat:あのキャラクター、面白いと思うんですよ。
his:部長って、かなり重要ですよね 。
wat:ねえ。墨二に監督がいないぶん、とくに。
his:そう! 基本的に、墨二の野球には大人がいないんですよ。
wat:近藤のとーちゃんくらいで 。
his:そうです。
wat:だからこそ、各キャプテンの存在感が目立つと思うんですね。
his:あれは、近藤が子供だからでてきたキャラだと。
wat:そうですね。

●表現技法の面白さ
wat:あと、表現として時代を感じるというか面白いというか、とにかく選手がダイレクトキャッチした後って、かならず効果音が「ゴロゴロ」(笑)
his:そうそう(笑)
wat:効果音の表現は結構重要だと思うんですよ。
his:あれは、かなりウケがいい表現のようですね、「ゴロゴロ」。
wat:それ以外にも結構あるんですが……思い出せない(笑)
his:ヘコ〜
wat:(笑)
his:なぜ「ゴロゴロ」が重要だとお考えですか?
wat:なぜでしょうねえ……、なんというか、キャッチの瞬間ではなくその後の様子を描くことで、結果よりもプロセスを描いているような気がするんです。
his:はいはい。西部劇の「ニヤリ」と同じ効果ですね。
wat:基本的にこの作品の主題は「努力」だと思っているので、それが一番顕著に表現されているような。
his:「がんばる、がんばる」を表現すると「ゴロゴロ」になる、と。
wat:あ、そうだ。他の面白い効果音、応援団の「ワッセ、ワッセ」。
his:「ワッセ」いいね(笑)
wat:いいですよね。本物は絶対に「ワッセ」とは言わないもん(笑)
his:でも、なんかいいリズムですよね、「ワッセ、ワッセ」って。がんばってる感じす るもん。応援ですら。
wat:なんか、この作品の応援って、ちっとも具体的じゃないんだけど。でもいい。あ、ヤジは具体的か(笑)
his:丸井とか近藤のヤジね(笑)
wat:そういえば、実際に応援を がんばっているトピックがありましたね。運動部員とかが
his:ありましたね。
wat:丸井がOBだったから、かなり後の方だと思うんですが……
his:丸井が空手部の連中を怒るやつ。
wat:そうそう。あとで、涙して。
his:イガラシ編だったかなぁ?じい〜ん ってやつ。
wat:そうですよね。

●歴代キャプテンのキャラクター
wat:さて、そろそろキャラクターの話に入りたいんですが……
his:はい。最初の方にもどしましょうか。
wat:まず、歴代キャプテンについて。多分、一番好きなのはって聞いたら、誰もが間違いなく谷口かイガラシになると思うんですが。
his:そうですね。
wat:hisさんは?
his:谷口くんでしょう。たぶん 。
wat:僕は最近、丸井が結構好きで。でも、やっぱりイガラシかなあ。
his:なんか、「歴代ガンダムでなにが一番すき?」って話と同じかと(笑)なんか、日によって違うんですよ。一番が。
wat:そうですね(笑)で、谷口君なんですが、この人がいわゆる墨二の「がんばる」カラーを作った人でありますから、当然カリスマ性は高いわけで。そんでもって、結構情けなかったりする訳なので、僕なんかは「ああ、キャラクター作りが上手いなあ」と感心してしまうんですね。
his:上手い、と。
wat:うん。
his:ぼくは、よくわかんないんですよね。
wat:というと?
his:谷口くんのなにがよいのか。
wat:でも「好き」?
his:好きなんだけど、魅力をあまり説明できないんです。
wat:ああ、それはわかる気がする 。
his:「キャプテン」連載の経緯なんですが、もともとちばあきおさんは「様々なキャプテン像を描くオムニバス形式で」ということで連載を開始したそうですね。
wat:なるほど。
his:その第1話が「谷口君」だったと。ところが、担当の谷口氏の薦めで(笑)、谷口キャプテンでずっと行こうということになったらしいです。
wat:あ、そうなんですか(笑)
his:そこでね。オムニバスでやっていく、という形式を変更してまで谷口君を続けた理由ってなにかと。よく考えると結構、思い切った決断だったんじゃないかなぁ、とも思ってしまうわけです。
wat:そうですね。
his:とにかく、谷口君のキャラの魅力が、第1話にして充分に発揮できている、と。そういうことですよね、きっと。
wat:でもそれなら、さっきのミスというか、齟齬の理由はよくわかりますね。
his:あ、どういうことですか?
wat:「読切」の予定なら、丸井のキャラクターなんて考える必要性もなかったわけで。
his:あ、はいはい。そういうことです。それよりもwatさんのいうとおり、谷口君のつくりだした「がんばる」カラーが、第1話に凝縮されている、という予測がまず成り立ちますよね。
wat:そうですね。
his:そういう観点で、第1話を見ていくと、結構おもしろいんですよ。全部読まなくても第1話を読めば、半分くらい、理解できそうな(笑)
wat:谷口がキャプテンになったのが唐突な気がしていたんですけれども、実はそうではないと。
his:いや、唐突は唐突でしょう(笑)
wat:でしょうか(笑)。ともかくですね、僕は唐突だったにしても、その後の3人のャプテンともども、その「がんばる」をこれでもか、と裏付けているわけです。
his:そうですね。
wat:その裏付けがなんともまた、いい。
his:変えないんですよね。この人。テーマを。
wat:この点が、僕が「プレイボール」より「キャプテン」が好きな理由だったりするんです。
his:はい。よくわかります。
wat:で、谷口以外のキャプテンなんですが……
his:はい。
wat:僕が最近丸井がいいなあと思うのは、谷口をひきずって、それでも自分のチームを作り上げなければならないという。
his:はいはい。
wat:あの、情けなさというか微妙なところが妙にリアリティがあるところ(笑)
his:イガラシの誘導訊問にひっかかったようなシーンとか、いいですよね。
wat:いいですね(笑)
his:すごいミジメで(笑)
wat:ああ、いいやつだなあという感じもあって(笑)
his:たぶんみんな言うと思うけども、4人のキャプテンがそれぞれ個性的でありながら、一貫したテーマで描きつづけて、ひとつの作品としてまとまりのある仕上がりになっている、と。
wat:そうですね。僕がその点で上手いなあと思うのが、近藤。
his:近藤ですか?
wat:絶対に一番「ものを考えていない」存在であるわけじゃないですか、彼が。
his:はいはい。
wat:でも、「将来の墨二」を考えたのは、彼だけ。まあ、とうちゃんのアドバイスがあったわけですが……
his:さっきもでましたね、近藤茂太さん。

●表現技法の面白さ
his:終わり方がすごく上手い、というかぼく好みで。
wat:あ、そうですか? 終わり方は……僕はチョット物足りなくて。イガラシが優勝できなくて、そんでもって近藤が将来のことを考えて、で、ジュニアがキャプテンになって優勝するというのが理想だったかなと。勝手な言い分ですが。
his:イガラシシンジ?ジュニアって 。
wat:そうそう。
his:うーん……。キャプテンでは野球少年たちの等身大の姿を描いていると思うんです。ようするに、野球のある日常だと。野球が軸になっていて、少年達は、それこそ谷口だったり、丸井だったり、イガラシだったり、時間が流れていくなかで、それでも少年は野球をしていくんだ、と。そういう時間を描いていると、ぼくは思っているんですよ。
wat:はい。
his:なので、近藤が墨二の将来を考えて、結果を見せないで終わるという、そういう終わり方からも、それが伺えるんじゃないか、と。
wat:なるほど。ずっと野球少年たちはそうやって「がんばって」野球をやり続けていくと。上手く余韻を残しているんじゃないかと言うことですね。
his:はい。watさんがシンジの野球を見たいと思ったのもその余韻ゆえのものだと思うんですよ。ぼくも見たかったですよ、JOYとか 。
wat:かもしれないです。ただ、僕が慎二の野球を見たかったのは、イガラシ、近藤と、1年の時からレギュラーで活躍していた人物が結果的にキャプテンになっているわけじゃないですか。
his:はい。
wat:だから、多分慎二はキャプテンになるんだろうと。そして、JOYもなるんだろうと。
his:そうですね。
wat:で、2度あることが3度あったらそうなり続ける証明になる気がするんですよね、なんとなく。あと、4代で終わっちゃったのが中途半端な気がしますし。
his:半端といえば、半端ですね 。
wat:まあ、終わり方については意見が割れるところだと思います 。
his:そこらへんは好みですかねぇ?
wat:でしょうねえ。
his:きれいには終わってないけど、そこがいい、という感じなんです、ぼくは。

●トーンの使用が少ない!
wat:そうそう、僕は全体的に見やすくって好きなんですが。
his:見やすい? といいますと?
wat:さっきも出ましたけれど、トーンをほとんど使っている割には汚くなっていない。カケアミも丁寧だし、服の汚れの表現も細やかだし。
his:そうなんですよね。
wat:これは結構すごいことだと思うんですけれども、どうでしょうか。
his:泥臭い絵なんですけど。印象は泥臭い、ですよね?
wat:そうですね。
his:でも、きれいなんです(笑) バカみたいな言い方してしまいました(笑)
wat:いやいや、実際そうなんですよね。人物の描き分けも見事ですし
his:なんというか、藤子不二雄の藤本先生の絵とある意味同じことが言えるんですが、真似しづらい絵だと。
wat:僕はそのあたりはよく解らないのですが……
his:説明がむつかしいんですが、単純な線で、迷いなく描いていて、なおかつ精錬された技術を持っている人の絵は、基本的に真似しづらい、と。だからアシスタントなんかが人物を描くとすぐバレるんですよね。アシなどの他人が、作者のタッチそっくりに描こうとすると、線に迷いがあったりとかで。
wat:ふーむ。
his:あ、変なこと書いた。あんまり関係ないんですけどね(笑)
wat:というか、やっぱりよく解らない(笑)。わかる人にはわかるんでしょうかねえ。
his:ちょっと難しいです。説明するのって。すみません。
wat:いえいえ。

●独特のキャラクターの使い方
wat:で、「ああっ、同じ顔」っていうのは僕の中では島田と牧野くらい(笑)。といっても「似ている」って程度で。
his:同じ系統の顔ですね(笑)
wat:あとは、脇役までバラバラ。このシンプルな絵柄であれはすごいと思います。
his:ちゃんとわかりますよね。全員 。
wat:あとは、ネーミングセンスですね 。
his:いかにもな名前が多いです 。
wat:これはキャラクターの位置づけとも関係してくるんですが……例えば、フルネームがわかるのは谷口・慎二くらい。丸井もイガラシも近藤も下の名前がわからない。
his:主人公なのに名字しかわからないのっておもしろいですよね。イガラシなんてカタカナだしなぁ。
wat:そうそう。で、あと名前がわかる脇役がいっぱい。松下や曽根や牧野や……
his:加藤、遠藤とか(笑)
wat:その後に名前がわからないけれど、いつも応援団にいる人やら、そんなのがいっぱいいると。記者さんだって名前わからないし(笑)
his:そうですね。
wat:あとお気づきかも知れませんが、最初の最初に、佐野君っていう人が名前だけ登場します。
his:なんですか? それ(笑)
wat:前キャプテンがレギュラーの発表をするでしょう?ボードに書いた名前が、「2番キャッチャー佐野」(笑)
his:なんだ(笑)。青葉の佐野かと思った。
wat:でも谷口と松下とイガラシのタマを受けていたのは「佐野」だと言うことに(笑)
his:でも、小山じゃなかったっけ?キャッチャーって。丸井のときだったかな?
wat:でも、そうですよね。まあ、最初だからなあ。
his:プレイボールなんか、もっとすごいですよ。半田の学年が変ったりとか(笑)
wat:そうそう、それは僕も思った。谷口とタメの筈が、いつの間にか丸井と同学年に(笑)
his:そうそう。期待の新人が何人も消えていたりとか。
wat:期待の新人って?
his:えーと松川と同じ学年で大島中のサードだったやつとか。
wat:あー、なるほど。
his:なんか、ちばあきおって人はマジメなのか、いいかげんなのか(笑)
wat:ところで余談なんですが、倉橋って「キャプテン」に出てきます?
his:でてきません。
wat:松川は記憶があるような気がするんですが……
his:松川もでてきませんよ(笑)
wat:やっぱりそうなんですよねえ、実際 。
his:あれはさすがに後付けです ね。
wat:結構いそうなキャラクターだったんですが。
his:はいはい。いそうですよね〜(笑)。それはさておきですね。ときどき間違えたり消えたりするキャラはいるものの、基本的にはレギュラーメンバーには名前があるわけですよね。
wat:そうですね。
his:それは、どんなマンガでもそうなんですが、名前までつけて、しかもレギュラーなんだってことならばそれなりにキャラ付けしていきますよね、ふつう。「ルーキーズ」のように。
wat:そうですね。
his:ところが、それをやらないんですよね。なのに名前はあるし、打順も決まっているし、ポジションも決まっている。
wat:うーむ。
his:それって、なんていうか……視点が動かない、といえばいいのかな?
wat:
his:あるときは加藤、あるときは浅間に、といった感じでカメラを向けないで、あくまでも「○○率いる墨二」という視点を崩さない。
wat:なるほど。
his:なんか、不思議なんですよね 。
wat:不思議だけど、イヤじゃないでしょう?
his:もちろん、いいなぁと思うんですよ。でも不思議(笑)
his:島田なんて、近藤のせいでレギュラーおろされたのに、スポットライトがあたらない。
wat:うーむ(笑)
his:松尾くらいじゃないかなぁ、家庭環境がみえたのって。あ、べつに家庭環境じゃなくってもいいんですけど。
wat:そうですね。松尾はちょっと他と違う感じで。そのあたり、あんまり意識しないで自然にやっていたような気がするんですけれど。
his:うん。そうですね。
wat:描きたくなったら描く。必要なかったら描かない。
his:その、ちばあきおにとっての「自然」って「チーム」なんだと思う。
wat:なるほど。
his:個性派ぞろいの、スラムダンク系のチームではないんだ、と思うわけで。
wat:そうですね。確かに。しかも、攻守にバランスがいいし。たとえば、守備やバッティングは全員で同様の練習をしてチーム全体として上手くなる事ができる。しかし、ピッチングだけはそうもいかないわけで、歴代キャプテン4人のうち3人がピッチャーなのは、ピッチャーに才能が集まりやすい「野球」というスポーツ自体の特性だけではなくて、勢いピッチャーに個性を出さざるを得ない面があったんじゃないかと思います。
his:ピッチャーはどうしようもない、と。
wat:そうそう。

●なかなか凝った装丁
wat:えーと、実は表紙の話なんですが……。
his:はい。
wat:「キャプテン」は今のところ、ジャンプコミックス版、ジャンプコミックススペシャル版、愛蔵版、文庫版と4形体で出版されていると思うんですが。それで、やっぱり装丁は全部バラバラなわけですよね。
his:そうですね。
wat:hisさんは、愛蔵版で読んでいるわけでしょ?
his:えーと、JC版とJCS、文庫版とのミックスで持ってるんです(笑)。ハードカバーの愛蔵版は持っていません。
wat:あー、そうなんですか。それでですね、ジャンプコミックス版は僕はちょっと面白い形の表紙だなあと個人的に思っているんです。
his:そうですね。僕は好きです。小学生のころは自作のマンガの表紙で、「キャプテン」の装丁をパクったりしました(笑)
wat:この、「中身のコマの抜粋」の上に各キャプテンの1人ヌキをかぶせるというのは、なかなか臨場感があっていいと思うんですよ。特に時代背景を考えると、なかなか洒落た表紙装丁だなあと。
his:時代背景、といいますと?
wat:この時代って、結構シンプルなものが多いじゃないですか。ただ、主人公をニコパチで写したようなものとか、中身のカットをそのまま使ったものとか。
his:確かにそれはいえますね。当時の装丁デザイン事情は、よくわかりませんが、子供ながら、僕のセンスにはビビっときていました。確かに。
wat:あと、加えてすごいなあと思うのが、巻末のゲスト(笑)。とにかく錚々たるメンツが揃っていて、この時代だと超一流の歌手やらタレントやらスポーツ選手ばかりじゃないんですかね。世代的によく解らないところもあるんですが(笑)。
his:25巻のシンガーソングライター「シグナル」って……誰?(笑)
wat:……知らない(笑)。
his:「キャプテン」って4つのヴァージョンがあるあるわけですが、その中でも、あえて「JCでそろえたい」って思えるような。ホントにいいデザインですね。
wat:そうですね。無理して古本屋を回った甲斐がありました(笑)。
his:うちは、最初にも言いましたが、ミックスなので本箱がかなり不恰好です(笑) ぼくはマンガで、表紙のデザインで買うといった、いわゆるレコードのジャケ買いみたいに買うことはそんなにないかもしれない。そういえば、パッケージに凝る作品って今でこそたくさんありますよね。「ジョジョ」や「ドラゴンボール」なんかで背表紙に凝ってみたりとか、「伝染るんです。」で乱丁風にデザインしてみたりとか。でも、昔はそうでもなかったような印象があるんですよ。ちばあきおさんってデザイン方面への関心ってのはどうだったんでしょうね。
wat:うーん……。ただ、背表紙はその巻のキャプテンが絵柄になっていますよね?
his:はい。
wat:確かに「ドラゴンボール」のように凝ってはいないけれど、これはこれでわかりやすいからいいような気もするんです。
his:いや、もちろんいいと思います。
wat:1つ感じたことが、「プレイボール」の表紙に比べると、「キャプテン」の表紙はずいぶんいい。なんたって、「プレイボール」は上にでっかく谷口君を、下に墨高のナインを載っけただけなので。
his:「キャプテン」の、マンガのコマをデザイン的に使ったのは小さなヒットだと思うんですよ。で、僕の興味は「作家」にあるので、表紙も装丁屋が勝手にやったのか、作家との話し合いで生まれたデザインなのかなんですね。装丁デザインってどんなふうに決めてるんでしょうね?
wat:どうなんでしょうか? 僕は出来上がったものがよければいいっていう人なので、誰がやったにしろ「ちばあきお」という名前で出ている作品は、アシスタントが手掛けたものを含めて「ちばあきお」という組織がやったものだと考えているので……。だから、編集者がやったんだろうと、デザイナーがやったんだろうと、あんまり興味ないんです。
his:わかりました。
wat:やっぱり、そのあたりhisさんは気になりますか?
his:いや、まず、装丁のことって僕はぜんぜん知らないんですよ。watさんはひょっとしたら、よくご存知かな?と思っただけなんですが。ただ、「アシスタント」の仕事も「作家」の指示の元に出されたものなので、それは「作家」の仕事と同義なんだというふうに、いしかわじゅんさんなんかがよく言っていますね。僕もそれは同感なんですが、「作家」の指示ではない仕事に関してはその作家の仕事とは見ないです。例えば絵画があって、作家の死後に付けられた額縁はその作家の仕事ではないので、僕は興味がないと。まぁ、そんな感じです。
wat:なるほど。僕は例えば「ちばあきお」という作品は、どのみちちばあきお先生が全て最初から最後までやっているわけではないので、まあ「総監督」という意味での「ちばあきお」だと思っているので。まあ、これは余談でした(笑)。それで装丁なんですが、雑誌の表紙なんかはわかるんですが、単行本は知らないです。すみません。
his:どっちにしろ、単行本はちばあきおさんも見ているわけですし、その意味では表紙も仕事の一部ではあるという感じでしょうか?
wat:「ちばあきお」の仕事ではないですが、「チームちばあきお」の仕事でも言うんでしょうか、そんな感じです。
his:僕のは素朴な疑問です。「装丁を含めた、デザインに関してちばあきおはどのくらい興味があったんだろう?」という。
wat:あー、どうなんでしょうねえ。難しいですね。

●デザインの工夫
his:僕の感覚では、ちばあきおさんってデザインに興味がない感じに見えるんです。なんかユニフォームとか見ていてもデザイン好きそうな感じがしないし。
wat:あれって、意図的なものじゃないんでしょうか?
his:意図的だとすると「学生野球だから」ということですよね。
wat:そうそう。
his:学生野球だからわざと地味にした、でもいいんですけど。でも、墨二のユニフォーム、一番地味ですよ。練習着みたい(笑)
wat:それは1巻の最初から登場だから、仕方なかったかなとも思うんですが……。あ、でも青葉はそんなに地味じゃないか(笑)
his:そうなんです。他のチームを見るとトーンを使ってないので、わかりにくいですが、実は手が込んでるんですよね。で、墨二と青葉のユニフォームは「三流」と「名門」の差をデザイン的に表したんだ、といえるなぁと。watさんのいうとおり、あえてやったもんだと思います。
wat:手が込んでいると言えば、ここでもカケアミが大活躍で(笑)。
his:あれ? 今、あらためて1巻を見たんですが、トーン使っていますね(笑)
wat:どこ、どこ?
his:僕の青葉のイメージは佐野なんで、ちょっと勘違いしてましたが、谷口君の青葉のユニフォーム、トーン貼っていませんか?
wat:ほんとだ(笑)
his:最初はトーンだったのに、後からは手描きで点々と描いてる(笑)
wat:あ、あと1巻の17ページ。後ろ向きのキャッチャーにトーンがっ!(笑)
his:あ、ほんとだ〜(笑)
wat:なんだか、結構ありますね(笑)
his:最初だからトーン使ってみたけど、たぶん「トーンを使わない」とどこかで決心したのかもしれませんね。
wat:そうですか?
his:決心というと大げさですが(笑)、青葉のユニフォームなんて最初に貼ってあったにもかかわらず、後にわざわざ点々でトーンを模すように手描きなんで。
wat:なるほど。そういわれると……。ただ、使ってみてやっぱり手書きがいいと感じたか、それとも敢えてこだわったのか、そのあたりはやっぱり永遠に謎になってしまったかなあと。
his:でも、最初はトーンだったことを忘れて手描きにしたということはなさそうだなぁと。
wat:うん、それはそうですね。そのあたりはやっぱりこだわりって事なんでしょうね。
his:それで少し話をもどしますが、まぁ僕は墨二のユニフョームが極限にまでにシンプルなデザインになっていて、一方で金成中やら青葉やらの名門校は手のかかるデザインになっているので、まず対比を表していると。そういうわけで、実は意外にちばあきおさんはユニフォームのデザインするのってけっこう好きかもなぁ、と漠然と思いました。それで、表紙のデザインなんかも案外本人も絡んでいたりして、なんて妄想が(笑)
wat:確かに、そのデザインの対比という面ではすごいなあと思います。

●エンディングについて
wat:話は変わりますが、最終巻のあとがきで作者が書いているんですが、やっぱりそれぞれのキャプテンの個性というのがこの作品の最大の魅力だと思うんです。それで前に云った終わり方の話ですが、シンジがキャプテンになっちゃうと、兄弟だからどうしてもイガラシとキャラクターが似かよってしまう。だから近藤までで、それから先を描かなかったのかなあと思いました。どうでしょう?
his:キャラクターのバリエーションで考えるとシンジは弱いかもしれませんね。確かに。
wat:あと、やっぱり墨二は「守備のチーム」なんですよね。目立つのはやっぱり守備練習のシーンですし。イガラシ・近藤のイメージが強いですが、やっぱりピッチャーのチームじゃないし、それほど足のあるやつもいない。巧さで盗塁をしている。あと「ムラのない打線」というのは、飛び抜けてすごいバッターがいない証明でもありますし。
his:そうですね。そういえば、守備のチームを描く作家さんってあんまりいないかもしれませんね。前回もでてきましたが「ゴロゴロゴロ」はすごく印象的です。
wat:やっぱり「がんばる」を描くとなると、鍛えればうまくなる守備を描くのが一番なのかもしれませんね。
his:よく考えるとそうですよね。長距離ヒッターにしても速球投手にしても才能のほうが先にある感じがしますし。
wat:そういう意味で、技術的にも「努力」をいかに上手く描いているかが証明づけられると思います。
his:そうですね。やはり、がんばるということとは「ゴロゴロ」であるべきなんだ、と(笑)。
【2001.10.20 チャットで収録】
 「マンガびと」さんでhisさんの詳しい解説が付いた本文を読むことができます。「マンガびと」のトップページから「マンガ会議」「#13〜15 ちばあきお『キャプテン』」をご覧下さい。