おかみさん (2000.2.2)〔w〕
作 者 一丸
連 載 小学館『ビッグコミックオリジナル』
単行本 小学館ビッグコミックス[全17巻]
ストーリー  関脇山風と結婚した山咲はつ子は、関脇の引退と部屋の新設で新婚早々、大相撲春日部屋のおかみさんになる。ちょっとドジで料理下手なはつ子を中心に、春日親方(山咲一夫)、夏木(花嵐)、高田(逆波)、咸臨丸、堂々力(高橋)、真弓、初音、道灌山、桜丸、高崎山(臼木)、佐藤など弟子たちや部屋を支える人たちの生活を描く。
設 定  一話完結方式のため、スピード感や迫力の展開は当然期待できない。しかし、成年漫画に相応しい落ち着いたストーリー構成は特筆すべきもので、一話一話の題材の取り上げ方からもその片鱗が伺える。花嵐や逆波、咸臨丸といった番付が上位の力士だけではなく、入門したもの全てが一度(大抵は数回)はメインとなるストーリーが築かれているのもその例で、幕下以下の力士の生活を実感できるのが面白い。
シナリオ  もともとキャラクターがかなり完成度が高いためわかりづらいが、そんな個々のキャラクターにさらに上質のリアリティを植え付けているシナリオは特に注目したいところだ。一見平凡で変化の少ないストーリーに見えるが日常生活を描くためにはそうでなくてはならないし、実際にここまで淡々と描かなければおかみさんのキャラクターは確立しなかった。全編を通して読んでみて一つたりとも不快に感じる話がないという究極の普遍性はなかなか生み出せるものではなく、地味ながらも中身はしっかりしている作品の代表例として挙げることもできるだろう。
キャラクター  多少偏見がこもっているかも知れないが、一般的に「相撲取り」ないし「おすもうさん」というものにそれぞれの個性を見つけだすことはなかなか難しいのではないだろうか。話す言葉は「ごっちゃんです」、まげに着物に太った体。そんな力士に対する画一的なイメージをこの作品は少なからず打破してくれる。個々の力士のキャラクターをきちっと確立させた上で一話一話が構成されているのは中でも特徴的で、いわばキャラクターの構成がこの作品の屋台骨であるとも云えるのではないだろうか。おかみさんの魅力だけではこの作品は成り立たなかったし、それをさりげなく表現しているところに意義がある。
グラフィック  キャラクターのところでものべたような没個性的な力士たちをよく描いていると思う。安室と西村、堂々力と薫、おかみさんと美保など多少見分ける上で混同しがちなキャラクターもいるにはいるが、ストーリー上で上手く処理していて、さほど問題はない。
 カット割りなども平凡なようで、実に精錬されたレベルの高いものだ。さらにカット内の構成、微妙な表現を上手くこなしたネーム、ユーモア溢れるデフォルメなど見るべき点は多い。女性の美しさ、かわいらしさの表現には多少異論もあろうが、おかみさんや喜屋武安奈といったキャラクターを見る限りそう劣ったものとも云えないだろう。
装 丁  デザイン的には文句ない。着物の生地のような純和風の模様をバックに精錬されたタイトル、表紙と同イメージの背表紙など作品の内容と実によくマッチングされたカバーは最高級のレベルに位置されるものだ。残念なのは2巻から登場する裏表紙のおかみさんの絵。特別意味があるとは思えず、できれば1巻と同じデザインにして欲しかった。